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2009/08/29(Sat)23:49

ディアドクター

Category[観た映画] Community[映画★★★★★レビュー]Tag[★★★★☆] CM[0]TB[0]

久しぶりの新作映画ですが、例によって前評判やあらすじを全く知らないで見ました。
いや、鶴瓶師匠に脱帽です。「ディアドクター」観ました。


レビュー:★★★★☆レビューの星について
ディア・ドクター(通常版)(DVD)

三行あらすじ

研修医・相馬が配置されたのは、隣家まで数kmあるような山奥の農村の診療所。
過疎化の進む村で老人たちからの信頼を得て医療を尽くしていたのは、たったひとりの医者(と看護婦)だった。
医者の仕事ぶりに相馬が憧れを抱き始めた夏のさなか、その医者・伊野は突然村から消えた。

鶴瓶さんの演技をまともに見たのが初めてだったので「どんなもんよ」という気持ちで見始めたのだけど、いや すごい。
最初は「つるべ出てきた(笑」という感じだったのが、話が進むうちにいつのまにか伊野先生以外には見えなくなっていました。
陽気に仕事をさばく姿や、相馬に見せる底知れない迫力、カルテを見つめる視線。医者以外の何者でもない。
ちょっとうさんくさい感じや農村の空気になじむ呑気な空気まで、まさにハマり役!
見終わったあとに公式サイトのキャストコメントをみたら、これがまた私が感じたことをピタリ。
いやいや狙いどおりの見事な演技でした。

前半の田舎の伸びやかな空気とほがらかな人々の描写があるだけに、後半「事実」に気づいた人々はひしひしとしんどい。
伊野がニセ医者であるという「事実」。
「事実」は事実として、この物語が問いかけてるのは、「村人を救ったのはだれか?」という「真実」だ。
確かに、免許なく医療行為を行うのは犯罪だ。責められるべき行為だ。
ただ、伊野がやっていた行為が白日の下に晒されたときに、周囲の人々はそのとき初めて事態の重大さに気づく。
伊野センセイ以外は、年寄りだらけのこの村にくる人は誰もいない。
伊野センセイ以外は、老母の癌に気づく人は誰もいなかった。
伊野センセイ以外は、若い医者に医療の意味を知らしめる人は誰もいなかった。
罪は罪だ。それが起こる以前と、起こった後の恩恵を天秤にかけても、それは揺るがない。
でも、伊野の去った村の村人達と観客は、ずっと「真実」に頭を悩ませる。

この映画を観た少し後に、田舎のさらに田舎のほうに母といってみたら、まさにこの映画に出てきそうな山間の農村。
まさに日本のどこにでもある過疎村だったのだけど、自然とこの映画を思い出しました。
自分も映画の中のりつ子のように、実家の母から離れて都市で働いている身。
(末っ子で、ほかの姉妹は結婚し家庭を持っていてる点まで同じ……)
かづ子が胃癌になったように母がもしも……と考えたら、ますます「真実」がわからなくなりました。
自分が気づいてやれないような状況で、
大事な肉親を看ていたのがニセ医者で、
さらに肉親が「病気を子に言わないでほしい」と言っていたとしたら。
私なら、ニセ医者を責める前に自分が情けなくて悲しくてやりきれないだろうなぁ。
医者と患者の関係ももちろんだけど、親と子の関係のほうに感情移入してしまう、後ろ暗いところのある自分でした。

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